保険のクーリングオフ

(神 行政書士事務所作成)
生命保険、損害保険、自動車保険といった保険の契約には、クーリングオフ制度がありますが、クーリングオフできるか否かについては、法律上のクーリングオフ制度だけでなく、保険会社が独自に定めたクーリングオフ規定についても検討する必要があります。

法律では、クーリングオフできる保険契約とは、保険期間が1年を超えるもので、法律で定めた適用除外(下表)に該当しない場合となっています。クーリングオフできる期間は8日間です。(なお、投資型保険(変額保険、外貨建て保険等)の場合には、クーリングオフ類似の仕組みとして特定早期解約制度があり、10日以上の期間内に解約できることになっています。)

ただし、これと異なるクーリングオフ規定を保険会社が独自に定めているケースが多く見受けられます。また、その場合は法律上のクーリングオフ制度よりも消費者にとって有利な内容のクーリングオフ規定となっていますので、法律上はクーリングオフできない場合でも保険会社の規定によりクーリングオフできるという場合があります。 例えば、法律上はクーリングオフできないとなっている「保険の通信販売」や「保険料を口座振込みで払い込んだ場合」であってもクーリングオフを認めたり、「クーリングオフできる期間」が法律より拡大されて10日や15日等になっているケースもあります。

ですから、ご自分の契約がクーリングオフできるのか否か、クーリングオフできる条件はどうなっているのかについては、 まずは契約時に受け取った契約書類、「ご契約のしおり」や「定款約款」を良く読んでみることです。




それでは、以下で法律上のクーリングオフ制度について解説します。

保険のクーリングオフ制度とは、概略すれば、「生命保険や損害保険等の保険期間が1年を超えるものがクーリングオフできる」というものです。
ただし、クーリングオフできない場合もあり、それは下の表の「クーリングオフできない場合(適用除外)」でチェックして頂くということになります。 (例えば、保険料を口座振込みで払い込んだり、医師の診査が終了したとき、法人としての契約等の場合は、クーリングオフの対象外です。)
なお、保険契約の場合は、一部の例外を除き、店舗(窓口)・自宅・勤務先・喫茶店等、どこで契約した場合であってもクーリングオフできます。



参考】 保険契約がクーリングオフできることは、保険業法に規定されています。(保険法にはクーリングオフ規定はありません。)


保険のクーリング・オフ制度概要

取引内容 クーリングオフ期間 適用対象 法律
保険契約

(生命保険・損害保険・医療保険・個人年金等)
8日間

(法定の契約書面が交付された日と申込みをした日との、いずれか遅い日(が1日目)から8日以内に発信)
保険期間1年を超える保険契約

※保険料支払義務あり

※特定早期解約制度あり
保険業法309条
※クーリングオフ期間は、初日を参入して計算する。
※クーリングオフ通知書をクーリングオフ期間内に発信すれば良い。通知書の到着は期限後でも良い。

適用対象となる保険
生命保険 終身保険、養老保険、個人年金保険、定期保険など
損害保険 火災保険、地震保険、自動車保険、賠償責任保険、傷害保険など
その他の保険 医療保険、疾病保険、がん保険、介護保険など


全ての保険契約がクーリングオフできるわけではありません。保険業法(第309条第1項)のクーリングオフ規定には、次のように書かれています。

保険会社等若しくは外国保険会社等に対し保険契約の申込みをした者又は保険契約者(以下この条において「申込者等」という。)は、次に掲げる場合を除き、書面によりその保険契約の申込みの撤回又は解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。(保険業法309条1項)

つまり、「次に掲げる場合を除き」クーリングオフできるというわけです。次に掲げる場合とは、309条1項の1号〜6号に規定されており、次の表の通りですが、この場合はクーリングオフできません。


クーリングオフできない場合(適用除外)(神 行政書士事務所作成)
309条 1号 8日経過後
クーリングオフに関する事項を記載した書面を交付された場合には、その交付された日と申込みをした日とのいずれか遅い日から起算して8日以内がクーリングオフ期間
特定早期解約

2号 営業・事業のため、または営業・事業としての保険契約 ×
3号 法人、代表者・管理人のいる法人以外の社団等、国・地方公共団体による申込み ×
4号 保険期間が1年以下 ×
5号 強制保険
(自賠責保険、労災保険、国民健康保険、介護保険など)
×
6号 施行令
45条
1号 あらかじめ日を通知して営業所等を訪問し、かつ、その通知で、または訪問の際に、保険契約の申込みをするための訪問であることを明らかにした上で、その営業所等においてその保険契約の申込みをした場合
2号 自ら指定した場所での申込み
※自宅、営業所等を除く

(注)自宅、営業所等での申込みはクーリングオフできる。ただし、営業所等での申込みが1号に該当する場合はクーリングオフできない。
3号 郵便・FAX・インターネット・店頭端末などによる申込み
(保険の通信販売)
4号 保険料等の払込みを口座振込で行った場合
※保険業者に依頼して行った場合を除く
5号 指定の医師による診査が成立条件の保険契約の場合は、医師の診査が終了したとき ×
6号 勤労者財産形成貯蓄
(一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄)
×
7号 担保のための保険契約
(住宅ローンの団体信用生命保険など)
×
8号 保険契約の更改・更新・変更の場合
※転換はクーリングオフできる
×
※ 投資型保険(変額保険、外貨建て保険等)の場合は、クーリングオフできない場合でも特定早期解約制度により、契約から一定の期間内(10日以上の期間内)に解約できる場合がある。(○印は特定早期解約が可能)

条文≫ (保険業法)
クーリングオフ … 法309条施行令45条施行規則241条施行規則242条
特定早期解約 … 施行規則11条、3の2施行規則74条施行規則53条の12




以上のように、保険契約は、8日以内なら必ずクーリングオフできるというわけではありません。上記のクーリングオフできない場合(適用除外)に該当すればクーリングオフできません。その場合は、クーリングオフできないのでクーリングオフに関する書面を交付されない場合もあります。 一方、クーリングオフできる場合であれば、クーリングオフに関する書面を必ず交付しなければいけませんので、受け取った書類を確認してみることです。


クーリングオフの特約

ところで、先にも述べましたように、保険契約は、特約(約款)で法律上のクーリングオフ制度に変更が加えられることが多くあります。例えば、法律上クーリングオフできない場合でも保険会社が自主的にクーリングオフを受け付けたり、また、投資型保険の場合には、特定早期解約制度との調整が図られ、一律に10日間等のクーリングオフ制度となっているような場合があります。

なお、クーリングオフの特約で申込者にとって不利なものは無効となりますので、もし特約がある場合は、法律上のクーリングオフ制度よりも申込者にとって有利なクーリングオフ規定があることになります。詳しくは、「ご契約のしおり」や「定款・約款」を確認してみましょう。

特約の例
1.クーリングオフ期間を延長し、10日や15日等にするケース
2.インターネットから申し込んだ保険契約にクーリングオフを適用するケース
3.クーリングオフ期間の起算日を第一回目の保険料支払日(保険料充当金領収書を受け取った日、口座振込みの保険料が保険会社に着金した日、保険料のカード払いでクレジットカードの有効性を保険会社が確認した日)等とするケース



保険料の支払い義務

保険契約をクーリングオフした場合、損害賠償・違約金・その他の金銭の支払いを請求されることはありませんが、契約解除(クーリングオフ)までの期間に相当する保険料は支払う義務があります。(支払い済みの保険料全額という意味ではありません。保険期間の開始日から契約解除の日までに相当する保険料を日割り計算した額を限度とする支払い義務)

しかし、実際には保険料は請求されない、または、支払済みの保険料は返還されることが多いようです。


クーリングオフの方法

クーリングオフは、「クーリングオフに関する事項を記載した書面を交付された日」と「申込みをした日」とのいずれか遅い日から起算して8日以内に書面で行います。

書面で行うことは法律に規定されています。書面とは、ハガキ、封書、内容証明郵便、FAX等を言いますが、一般的にクーリングオフは、ハガキか内容証明郵便で行われています。
(契約を解除(クーリングオフ)した証拠を残し、後からそんな郵便は届いていませんとか、ハガキは届いたけれどクーリングオフするとは書いてありませんでした、などとトラブルにならないために、 相手が悪徳会社の場合や契約金額が高額の場合は内容証明郵便が推奨されます。)

ただ、保険契約に関しては、保険会社は悪徳会社というわけではありませんし、クーリングオフできなくなっても、保険料が月払いでその後いつでも途中で解約できるというケースもあるわけです。 クーリングオフしなかったら数十万円の支払い義務が発生するというような場合なら、念のため内容証明郵便でクーリングオフ通知書を送るということにもなるでしょうが、そういうケースは少ないのではないでしょうか。

ですから、保険契約の場合は、保険会社の本社・支社に電話で申し出る、あるいは担当者・保険外交員(が信用できる場合で説得される不安がなければ)に申し出る方法でもクーリングオフを問題なく受け付けてもらえる場合が多くあります。
(必ず郵便での通知を求められたり、クーリングオフの書式を交付され、記入・提出を求められる等、手続きについて指示される場合があります。)

なお、クーリングオフ通知書を送付する場合は、販売者が銀行の窓口や保険代理店であっても、保険会社(契約書上の契約した相手方)に送ります。

【参考】 保険契約のクーリングオフ通知書の文例


 投資型保険の特定早期解約







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